7−8 荻窪−西本地区の調査結果(精査地区)

本地区は,新編「日本の活断層」(1991)による会津盆地西縁南部断層の南部に位置し(図7−1),断層は荻窪付近は確実度T,西本付近は確実度Vとされている。

本地区の空中写真判読図を図7−8−1に,地質図を図7−8−2に,地質断面図を図7−8−3に示す。

空中写真判読結果によると,本地区のリニアメントは,LC 及びLD とランクが低く,断続的でかつ直線状を示さない(図7−8−1)。また,リニアメントの延長部を横断する低位段丘面上には変位を示唆する地形は認められない。

地表踏査結果によると,荻窪付近では,リニアメントの東側で七折坂層が東緩傾斜を,西側で七折坂層以下の地層が東急傾斜を示す撓曲構造が認められ(図7−8−2図7−8−3の 1−1'断面),リニアメントと撓曲構造とは対応している。

このリニアメントの延長上に位置する会津高田町若林西Loc−S423においては,撓曲による七折坂層の屈曲部が確認されるが,屈曲部に断層は認められない(図7−8−4−1図7−8−4−2)。また,同地点では,L1面が七折坂層の撓曲構造を覆って広く分布するが,この面に変位は認められず,面を構成する堆積物を覆うローム層の下部から沼沢−金山テフラ(約 5.5万年前〜約5万年前)が確認された(図7−8−4−3)。

したがって,荻窪付近においては,少なくとも約5万年前以降における撓曲あるいは断層活動はないものと考えられる。

一方,西本付近においては,リニアメントの両側で新第三系の層理はほぼ直立しており,リニアメントは,東側の流紋岩質火砕岩及び溶岩を主とする東尾岐層と西側の砂岩,泥岩を主とする二の沢層との地質境界に一致している(図7−8−2図7−8−3の 2−2'断面)。また,西本以南の宮川左岸に判読されるLC 及びLD リニアメントは,東尾岐層内の流紋岩質溶岩と同質火砕岩との境界にほぼ一致する(図7−8−5)。

したがって,西本以南のリニアメントは,両側の岩石の侵食に対する抵抗力の差を反映した侵食地形と判断できる。