4−1−2 トレンチ調査結果

本トレンチの地質平面図を図4−4に示す。トレンチ内には,相馬中村層群,白亜系貫入岩,中新統塩手層の破砕部及びこれらの基盤を覆って,礫層,砂層,土壌層等からなるA面堆積物が分布する。A面堆積物は,栃窪Aトレンチと同様に,層相,層位関係及び構造に基づき,下位のl層及びu層に区分される。

l層は,主に大礫〜巨礫の円磨度の良い礫層からなり,細礫層を挟在する。本層中からは平成9年度と同様,年代試料は得られなかった。

u層は,下位より概ね,礫層,砂層,シルト質砂層及び土壌層からなる。14C年代測定結果によると,本層の下部は1770±40y.B.P.,1850±40y.B.P.の値を示し,平成9年度実施した栃窪Aトレンチでも,u層の下部から2270±50y.B.P.及び1940±90y.B.P.の値が得られている。

本トレンチの北側法面には,平成9年度調査結果と同様,基盤上面及びそれを覆うl層に最新活動による変位が認められ,その鉛直変位量は約60cmであることが再確認された(図4−5)。

また,トレンチの底盤には,NW−SE方向に連続する旧流路が認められ,この旧流路は断層に切断されていることが確認され,左横ずれ変位を受けている(図4−6−1図4−6−2)。左横ずれの水平変位量は,トレンチ底盤上の旧流路の分布の食い違いから1.5m程度と推定される。しかし,この旧流路は緩い谷地形を示しており,断層の東西両側の旧流路の対比に関して根拠が乏しく,水平変位量が確実とは言えない。 このことから,同流路に直交する方向で,50cm間隔で底盤を鉛直にスライスして,各鉛直断面の観察及び基盤上面の測量を行い,基盤上面に認められる旧流路の形状を明らかにした(図4−7図4−8−1図4−8−2)。この旧流路の形状に基づき,断層の東西両側の流路の対比について検討をした結果,図4−9に示すように,最新活動における鉛直変位量を60cm,左横ずれの水平変位量を1.5mとして復元すると,断層の隆起側及び低下側の旧流路が良く連続する。