(2)広域重力探査

福岡市域では、前述した基盤上面の形状を把握し、警固断層系の位置を特定するために広範囲に重力探査を実施した。測点位置を図4−2−4−2に、重力探査の解析結果は図4−2−4−3のブーゲー異常分布図、図4−2−4−4の長波長成分重力分布図、図4−2−4−5の重力鉛直1次・2次微分分布図、図4−2−4−6図4−2−4−7の重力基盤のモデル計算結果に示した。なお、測定点の間隔が100m程度であるため、今回の解析では重力分布の短波長成分は除去して扱った。このため、解析によって描かれた地下構造の深度方向のスケールは、数10mから1qオーダーとなっている。

(1).長波長成分重力分布

@ 調査領域中央部で北西−南東方向に低重力異常域が存在する。この低重力異常の大きさは、高宮駅付近で最大となり、約3mGalである。これは前述の基盤上面のグラーベン構造に対応すると思われる。

A 低重力異常の方向は、警固断層系の走向と一致している。想定される断層位置は、低重力異常のほぼ南西方向から中心部に位置する。一方、博多湾付近では想定断層位置は高重力異常へと漸移している。

B 低重力域の北東側境界は警固断層系の走向とやや斜交し、ほぼ北へ向かって連続している。

C 調査地の南東端付近(大橋−井尻付近)では、重力分布のコンターに北東〜南西方向のパターンが卓越するようになり、Bで述べたコンターパターンと様相が異なっている。

(2).重力変化の鉛直1次・2次微分分布

@ 上記の長波長成分重力分布に見られる諸特徴が、よりシャープに認められる。特に、警固断層系と並行する北西−南東方向の低重力異常帯と、その北東側の南北方向の低重力異常帯とが分離して認められることは注目される。これらの低重力異常帯の存在は、これと直交する方向に、地下の密度構造(地質)が顕著に変化していること、即ち断層の存在を示唆していると見ることができる。

A 高宮付近では、その北西側に比べて低重力異常帯が不明瞭になっているが、これは断層そのものがはっきりしなくなることを意味するかどうかは重力探査結果のみでは判断は難しい。

(3).重力基盤構造

@ 重力基盤の起伏と長波長成分重力分布の起伏とは、正の相関関係にある。調査地の地下構造が、基盤の上位堆積層との2層構造的とみなせる場合には、基盤構造の3次元的な推定、あるいはボーリングデータの面的な補完に重力基盤を採用することが有効である。

今回の調査結果で見ると、重力基盤の深度は低重力異常域では、地表下数10mと見ることができ、最深の白金から大楠にかけては、80m程度と推定される。

A 重力基盤をベースとして、正断層型、垂直断層型、逆断層型の3ケースについてモデル計算を行った。この結果、正断層型では実測重力値と計算重力値があまり一致していないが、垂直断層型から逆断層型になるにつれ、両者が一致する傾向を示す。このため、重力探査からの解釈としては、警固断層がは逆断層型である可能性が高いと判断される。