5 今 後 の 課 題

今回,2箇年にわたる調査結果にもとづいて,横手盆地東縁断層帯に対して一応の評価を行った。しかし,この断層帯に対し十分満足できるデータが得られたわけではない。残された重要不明点は次の2点である。

・金沢断層の活動履歴が把握されていない。

・横手市の西,曙丘陵の西縁に認められる変位地形について未調査である。

金沢断層の活動履歴については,1896年の陸羽地震時に千屋断層と一緒に活動した可能性を指摘したにとどまった。

最近の断層活動の地表部での形態が幅の広い撓曲であることから,活動履歴は把握できなかった。今後調査を行っても,トレンチ調査まででこれを解明することは難しいとみられる。しかし,山崎(1896)が「大裂力」を見たとしている小学校(金沢本町)の北方の国道位置はほぼ特定できるので,この付近で明治の変状の跡が残されていないかを調査することは検討されてもよいと考えられる。

曙丘陵西縁の断層,変位地形は大雄村猪岡から平賀町樋ノ口にかけてみられ,この間での延長は約4.5kmであるが,より南方へ連続する可能性もある。この断層は調査対象の大森山断層と3〜5km離れていることから,今回の現地調査の対象としてなかったが,大森山断層の特に北半部に断層変位地形が認められなかったことから,現在では大森山断層に変わってこの断層が活動している可能性があり,今後調査を行うとすれば現地調査の対象となる。

一方,横手盆地近傍の断層としては,活断層研究会(1991)による「東鳥海断層」(延長10km・湯沢付近)がある。

この外に秋田県内では注目すべき断層として「能代断層」および「北由利断層」が挙げられる。この断層は,県西部の沿岸におおむね南北方向に延びている。沿岸地域では,マグニチュード7クラスの歴史地震が知られており,この歴史地震と断層の関係が明らかにされる必要があると考えられる。