4−4−4 大森山断層の活動性の検討

新第三紀中新世以降活動した成瀬川以南の大森山断層(臼田他;1981の稲庭断層)が,第四紀に入っても活動していた確証はないが,山地と盆地の大局的な配置を考えれば,成瀬川以北も含め,大森山断層付近で引き続き東側の山地を隆起させるような断層運動があった可能性は低くない。

しかし,断層周辺の地形には明らかな変位地形(断層活動の証拠)は認められない。また,成瀬川沿いでは,断層隆起側に千屋断層や金沢断層の場合に認められたような段丘の発達はみられない。

したがって,段丘地形が残っているケースの多い第四紀後期以降にこの断層が,千屋断層(平均変位速度約1m/千年),や金沢断層(平均変位速度約0.2m/千年)と同等の活動性を持っていた可能性は少ない。

また,この断層を覆う低位段丘(T5面:約1万年前に形成)に変位地形が存在しないことから,約1万年前以降は活動していないものと考えられる(幅の広い撓曲であった場合はこの限りではない)。