4−4−2 基盤岩の地質構造

この断層沿いの南部には,基盤岩の中新統中に地質断層が存在している。

成瀬川以南の大森山断層は,南北に延びる沖ノ沢背斜(臼田他;1981)の西翼にあたり,山地に分布する真昼川層と平野部の基盤岩である相野々層・山内層との境界となっている(臼田他;1981の稲庭断層)。

臼田他(1981)によれば,皆瀬川に近い稲川町清水小屋におけるボーリングWG−2では,深度148.1mまで相野々層および山内層で,両層は東に傾斜しており,東側の山地に分布して西に傾斜する真昼川層群(山内層の下位)との間に大きな落差を持つ断層が存在するものとみられる(図4−16参照)。

平賀町明沢西方から増田町真人にかけては,主断層の露頭は観察できなかったが,大森山断層位置(山地と平野の境界線より約400m山側)を挟んで,東側に真昼川層が西側に山内層が分布している。ともに走向方向は南北方向で,真昼川層は西に80゚程度,山内層は東に26゚〜74゚傾斜しており,構造のギャップがあることから両者の間に断層が存在するのは確実である。付近の道路法面には小断層も観察される。

しかし,このような中新統中の断層に関するデータがあるのは,平鹿町以南で,平鹿町より北部では基盤岩中に大きな落差を持つ断層の存在は考えにくい。ここでは,山内層および相野々層が,南北方向の軸を持って褶曲しながら緩傾斜で分布しているが,地質の分布からは断層の存在を考慮する必要はない。現地調査でも断層露頭は確認していない。

特に横手市以北では,活断層研究会(1991)に示された大森山断層の位置には,相野々層が東へ緩く傾斜して分布しており,構造上の変化は認められない。

横手市街地における浅層反射法探査では,相野々層と下位の山内層との境界とみられる連続した強い反射面が東に緩く傾斜しており,ここに大きな落差を持つ断層のないことを示している。

このように,基盤岩である中新統中の大森山断層は,南部で存在が明らかで,落差も大きいが,平鹿町以北では判然としなくなる。

図4−16 大館付近地質断面図(東西方向断面)