4−2−2 千屋断層の断層変位地形

陸羽地震で生じた地震断層の地形については,松田他(1980)に詳細に述べられており,ここでは千屋断層沿いにみられる活断層の証拠となるような変位地形の概要について述べる。

千屋丘陵の北部には赤倉川が位置し,丘陵南側には丸子川およびその支流の善知鳥川が位置し,いずれも盆地平野へ流下している(付図参照)。

丘陵地内の両河川の河岸には,低位段丘(T4・T5)・最低位段丘(T6)が発達しており上下流方向によく追跡できるが,丘陵の縁すなわち千屋断層の位置で途切れており平野川には連続していない。すなわち段丘面の標高を平野側に延長させると,地表面より高い位置になる。 

古い断片的な段丘であれば,盆地平野側では浸食されてしまったと考えることも可能であるが,連続性のよい新しい河岸段丘であるので,断層変位を考えないことには,各段丘形成時の地形を再現できない。特に一丈木付近のT4面は赤倉川にそって広く分布しており,赤倉川が盆地に出る位置において盆地内の沖積面と約18mの標高差を持っている。Nakata,T(1976)は,これらから断層の平均変位速度を算出している。

千屋丘陵の西縁,盆地平野との境界は,大局的には標高差50〜80mの崖地形をなしている。ここは,幾つかの小沢が刻み込まれており,その出口には小規模な扇状地が発達している。その小沢の谷底の標高が,平野側に形成された小扇状地の扇頂より高く,下流側と連続していない事から,丘陵と平野との境界に活断層が存在し,丘陵が隆起する速度に沢の浸食が追いついていないと考えられる。

このような千屋断層の変位地形は,横手盆地東縁断層帯の他の断層の活動性を検討する際の参考になると考えられる。 

その他の変位地形については,巻末資料を参考にされたい。