2−3 調査経緯

調査の経緯を,図2−1図2−2の流れ図に示し,以下に特筆すべき調査の流れについて記す。

横手市街での調査は,横手市街のほぼ中央を南北方向に延びる低崖が確認され,この低崖が断層崖であるか否かを確認することを目的として,浅層反射法地震探査とボ−リング調査が計画されていた。浅層反射法地震探査の結果,断層変位は認められず,且つ「沈降側(西側の下盤側)」で実施したボ−リングの結果,浅い深度で中新統の基盤岩が確認された。ことから,低崖は断層活動によるものではなく浸食崖と判断し,低崖の東側(上昇側と考えていた箇所)で計画していたボ−リング調査は中止した。

蛭藻沼地区での調査は,T6面(約5万年前に形成)における断層変形の有無を確認することを目的として,トレンチ調査が計画されていた。しかし,断層位置が国道13号に近接している可能性があることから,掘削に伴う国道への影響を考え,トレンチ調査を中止した。代替え位置として,断層崖と考えられる低崖(段差地形)が明瞭に確認される箇所(T3面上)での調査を実施した。調査では,表層の黒ぼく土の変形を確認し,年代を特定することによって活動履歴を明らかにすることを目的とした。調査の結果,撓曲によって形成された急斜面が,人為的な地形改変によって協調されたものであることが判明した。したがって,断層変位は確認されたものの活動履歴についてはデ−タを得られなかった。

三貫堰地区での調査は,事前調査としてのボ−リング調査にて,中新統の基盤岩が急に落ち込んでいる箇所(断層変位に伴う基盤岩分布のギャップ)を把握し,その箇所に断層が存在すると判断してトレンチ調査を実施した。しかし,トレンチ内部に出現した約2.9万年前に形成された粘土層が連続した分布を成しており,ここでは断層変位を受けていないことが判明した。そのため,トレンチ位置(トレンチの深部)における断層の存在を確認する調査と,約2.9万年前の粘土層に着目したトレンチ以外の周辺域における約2.9万年前の粘土層の断層変位の有無を確認する調査とが考えられた。ここで,断層の存在については,基盤岩の急激な落ち込みから判断し明らかであり,断層位置を詳細に特定することよりも,約2.9万年以降の新しい時代の断層活動の有無を把握することが優先度が高いと判断し,ボ−リング調査による上記粘土層に着目した分布形態の追跡調査を行うこととした。調査の結果,トレンチ位置西方での粘土層の撓曲を確認することができた。

御所野沼地区での調査は,当初T5面(約1万年前に形成)は撓曲変形していると考えられていたが,三貫堰地区において約2.9万年前以降の断層変位(断層活動)が問題となったことから,T5面の断層変位を確認する必要が生じ,ピット調査を実施した。調査の実施は,T5面上に4箇所のピットを掘削し,T5面の構成層を確認し撓曲による変位量を調査した。

図2−1 調査経緯の流れ図(その1)

図2−2 調査経緯の流れ図(その2)