1−6 調査結果の概要

今年度,金沢断層を主体に行った調査結果の概要を示す。

横手市街地で実施したボ−リングと浅層反射法弾性波探査の結果,当初想定された南北方向の断層は,市街地には存在しないことが判明し,金沢断層の南限が把握された。このことから,金沢断層は大森山断層に連続していないと判断した。

三貫堰地区のトレンチ調査並びにボ−リング調査の結果,中新統の相野々層と盆地内の更新統(主に砂礫)の境界をなす断層の存在が推定された。また,この断層は約2万9千年前の粘土層に覆われていることが明らかになった。しかし,この粘土層は断層の約150m西側の盆地内(国道13号付近)で撓曲変形をしており,その変位量は6.8mと見込まれた。

蛭藻沼地区のトレンチ調査では,約3万8千年前の段丘堆積物(T3構成層)が撓曲していることが確認され,その変位量は4.8mであった(トレンチ調査範囲内での値)。

御所野沼地区の測量並びにピット調査の結果では,約1万年前の段丘面(T5面)が撓曲していると判断され,その変位量は2.2mと見込まれた。

昨年度の調査結果に今年度の調査結果を併せて検討した結果,横手盆地東縁断層帯を構成する各断層について以下のような結論を導いた。

〔千屋断層〕

千屋断層は,陸羽地震の地震断層であり,今後もM(マグニチュード,Mと記載)7以上の直下型地震を発生させる活断層であるが,これまでの研究成果から,再来間隔が3,500年程度である事が判明しており,最新の活動として約100年前に陸羽地震(M7.2,1896年)が起こっていることから,この断層が近い将来大きく活動する可能性は極めて小さいと考えられる。 

〔金沢断層〕

金沢断層は,1万年前以降の新しい段丘面を変位させており,現在も活動している活断層であることが明らかとなった。

断層の分布は9kmであり,金沢断層の南方延長上に位置する大森山断層とは連続していない。

最新活動時期と再来間隔については不明であるが,金沢断層が単独で活動しているとした場合,断層の延長から推定される地震の規模はM6程度で,内陸の直下型地震としては,特に規模の大きなものではない。

断層が活動した際の地表の変位形態は,広い幅で地盤がわずかに傾く(撓曲)と考えられ,地表に断層崖の生じる可能性は低いとみられる。

断層活動による地表の形態がこのようなものであることから,陸羽地震の際に千屋断層と一緒に活動した可能性も考えられる。

この場合には,千屋断層と同様,金沢断層も近い将来活動する可能性は極めて低い。なお,杉沢断層は,金沢断層の活動に伴って変位するものと考えられる。

〔大森山断層〕

大森山断層は,金沢断層に比較してさらに活動度が低く,少なくとも1万年以上活動していないことから,近い将来活動する確率は低いと考えられる。

以上のとおり,横手盆地東縁断層帯においてM7級の直下型地震が近い将来発生する可能性は極めて低いと結論される。