(1)段丘面区分

調査地域の段丘は,横手川とその支流である廚川(くりやがわ)・三貫堰川・杉沢川・吉沢川流域に8段形成されており,分布標高・分布形態・現河床面からの比高・面の連続性・開析の程度等から「中位段丘」・「低位段丘」・「最低位段丘」に大別される。

これらの区分については,第2章で述べたように,中川ほか(1997)及び臼田ほか(1976・1977)に準拠し区分した。

表1−2−1−2 調査地域の段丘対比表

(1)中位段丘

中位段丘は,各段丘のうち最も高標高に位置し,横手市杉沢付近で国道13号の東側一帯に断片的な分布が認められる。分布標高により,「中位段丘1」・「中位段丘2」と細区分できる。

中位段丘1は,横手市蛭藻沼付近から横手市市街地南部の前郷付近に残丘として点在する。段丘面は原面をわずかに残す程度に開析が進行し,表面もかなり凸凹に富む他,蛭藻沼から睦成にかけては傾動・撓曲等の変形が認められる。段丘面の土地利用としては,畑地並びに果樹園とされている。。

中位段丘2は,中位段丘1の縁辺や近傍に1段低く分布し,蛭藻沼付近から睦成にかけての一帯及び金沢本町に点在する。段丘面は一部原面を残すものの,中位段丘1同様開析進行し,やや凸凹に富んでいる。蛭藻沼付近に位置する段丘には,傾動・撓曲等の変形が認められる。段丘面の土地利用としては,畑地並びに果樹園とされている。

(2)低位段丘

低位段丘は,横手川沿い及びその支流である廚川・三貫堰川・杉沢川・吉沢川沿いに分布している。分布標高により,「低位段丘3」・「低位段丘4」・「低位段丘5」の3面に細区分できる。

低位段丘3の段丘面は原面を残すが,部分的に開析が進行し,断片的になっており,蛭藻沼周辺では傾動が認められる。段丘面に土地利用としては畑地並びに果樹園とされている。

低位段丘4は,杉沢扇状地及び吉沢扇状地(国道13号より東側)に広く分布するほか,横手川・その支流である滝ノ沢沿い及び金沢本町に分布する。杉沢及び吉沢の扇状地に分布する低位段丘4は,扇状に広く連続して原面の保存が良く,平坦なことから水田として利用されている。金沢本町では傾動が認められ,多くが宅地として利用されている。滝ノ沢沿いにおいては,原面を残すものの部分的に開析されており,断片的であり,多くが畑地及び果樹園に利用されている。

低位段丘5は,杉沢扇状地・吉沢扇状地の中〜端部(主に国道13号より西側)及び横手川沿い及び金沢本町から金沢中野にかけての新旧国道に沿ってに分布する。段丘面は,原面を残すものの部分的に開析されており,多くが畑地・果樹園・宅地に利用されている。

(3)最低位段丘

最低位段丘は,横手川沿い及びその支流である廚川・三貫堰川・杉沢川・吉沢川沿いに分布し,「最低位段丘6」・「最低位段丘7」・「最低位段丘8」の3面に細区分できる。各面には亜段が認められる。

最低位段丘6は,横手川沿い・廚川・三貫堰川・杉沢川・吉沢川流域に分布し,杉沢扇状地の中〜端部(主に国道13号より東側)に広く分布する。

面は新鮮であり,下位面との段丘崖は明瞭であるが低位段丘5面との段丘崖は不明瞭である。主に水田・宅地として利用されている。

最低位段丘7は,横手川沿い及びその支流である三貫堰川・杉沢川・吉沢川沿いに狭長に分布する。原面の保存は良く,水田及び宅地に利用されている。

最低位段丘8は,現河床面によりわずかに高い面であり,現河道の両岸に密接して分布する。なお,ボ−リング(BBI−3孔・BSU−1孔)を実施した個所では,この最低位段丘8に相当する地質が表層部に分布しており,明瞭な段丘形成河川が存在しないことから,最低位段丘8'と呼ぶ。